腕を上げる。 布がふわりと持ち上がり、 目に見えない線を空間に残す。
歩き出すと、袖は静かに揺れる。 風を受けて、また戻る。 その往復が、今日のリズムになる。
信号待ちで腕を組む。 肘のあたりにできる小さな皺。 それさえも、今の気分を映している気がする。
カフェのドアを押すとき、 袖口がわずかに机に触れる。 その一瞬の擦れが、午後の始まりを知らせる。
ジャケットの中で、シャツの袖が呼吸する。 見えないところで、布は動いている。 誰も気づかない、小さな動き。
それでも、腕を振るたび、 袖は確かに空気を切り、道を描く。 前へ進むための、柔らかな線。
夕方の光が差し込むと、 袖の縁がほのかに輝く。 その輪郭が、今日という時間を縫いとめる。
袖が描く空気の中を、 僕は何気ない顔をして歩いている。 服と動きと街が、静かに重なる午後。
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