2026年2月28日土曜日

靴先の凹凸

歩き出す前に、足元を見る。
磨いたはずの革の先端に、細かな凹凸が残っている。

完全な平面ではない。
光を受ける角度によって、小さな影が浮かび上がる。

一歩、踏み出す。
アスファルトのざらつきが、靴先に伝わる。
その感触が、今日の現実を教えてくれる。

横断歩道の白線をまたぐとき、
靴先のわずかな丸みが、光を柔らかく返す。
完璧じゃない形が、なぜか心地いい。

石畳の道に入る。
凹凸は、外側だけじゃない。
地面の起伏と呼応して、歩幅が自然と変わる。

靴は正直だ。
どれだけ歩いたか、どこを通ってきたか、
すべてを先端に刻んでいる。

カフェのガラスに映る自分を見る。
少し擦れたつま先。
それは、今日までの時間の証みたいだ。

凹凸があるから、光は表情を持つ。
平らすぎたら、きっと何も映さない。

靴先の小さな起伏とともに、
僕は今日も街の上を進んでいく。
均一ではない道を、静かに受け止めながら。

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