朝の玄関で、しゃがみ込む。
まだ少し冷たい空気の中、黒い革靴が静かに待っている。
布でそっと表面をなぞると、くすんでいた革がゆっくりと目を覚ます。
光を受けて、わずかに反射するその艶は、昨日よりも少しだけ素直だ。
紐を結ぶ。
ぎゅっと引いた瞬間、今日の気持ちまで締まる気がする。
街へ出ると、アスファルトの上で革が小さく鳴る。
コツ、コツ、と規則正しい音。
そのリズムが、僕の歩幅を整えていく。
ショーウィンドウの前を通り過ぎたとき、足元に光が落ちる。
磨いたばかりのつま先が、まるで小さな鏡のように空を映していた。
革靴は派手じゃない。
でも、静かな誇りのようなものを足元に置いてくれる。
少しだけ背筋が伸びる。
歩き方が変わる。
それだけで、街の景色まで違って見えるから不思議だ。
今日も革靴は光っている。
それは誰かのためじゃなく、自分のための光だ。
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