駅を出ると、空がゆっくりと色を変えていた。
昼と夜のあいだにある、あの柔らかい時間。
ジャケットの肩に、夕陽がすっと差し込む。
濃紺の生地が、ほんの少しだけ赤みを帯びる。
歩きながら、光の角度が変わるたびに、
肩のラインが浮かび上がったり、静かに沈んだりする。
仕立ての縫い目が、細い影をつくる。
その一本の線が、今日という時間の輪郭みたいに見えた。
ビルの隙間からこぼれる橙色。
それが肩口に触れるたび、
自分がこの街の一部になったような気がする。
誰も気づかないかもしれない。
けれど、確かにそこに光はある。
磨いたわけでも、飾ったわけでもない、ただの布の上に。
夕陽は長くは続かない。
数分もすれば、影がすべてを包み込む。
それでも、その一瞬だけ、
肩に乗った光は、今日を肯定してくれる。
背筋が少し伸びる。
歩幅がわずかに整う。
肩に映る夕陽とともに、
僕は静かに夜へ向かって歩いていく。
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