コートの襟を立てるか、立てないか。
それだけで、今日の気分が決まることがある。
外へ出ると、少し冷たい風。
襟元をかすめて、首筋を抜けていく。
布がわずかに揺れる。
その小さな動きが、空気の流れを教えてくれる。
歩きながら、指先で襟を整える。
角度をほんの少し変えるだけで、
視界の端に映る輪郭が違って見える。
信号待ちのあいだ、風は遠慮なく通り過ぎる。
襟はそれを受け止め、そして手放す。
まるで、街のざわめきを一瞬だけ預かるように。
夕方になると、風は少しだけ柔らぐ。
襟元に残る体温が、静かな安心をつくる。
誰も気づかないかもしれない。
けれど、襟はいつも最前線にある。
光も、風も、温度も、最初に触れる場所。
通り過ぎる風とともに、
今日の迷いや疲れも、少しだけ遠ざかる。
襟を整え、もう一度歩き出す。
布の輪郭とともに、僕の一日もまた形を持つ。
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