2026年6月9日火曜日

懐かしい男の服の話

昔の男の服には、今とは少し違う空気があった。

流行を追っていたはずなのに、
今になって思い出すと、
その服だけではなく、
その頃の自分まで一緒に出てくる。

少し大きめのジャケット。

色落ちしたジーンズ。

やけに重たいブーツ。

意味もなく羽織っていたシャツ。

今見れば、少し古く感じるものばかりかもしれない。

でも、あの頃はそれがかっこいいと思っていた。

服は不思議なもので、
ただ体を包むだけではない。

その時代の空気や、
その人の背伸びや、
少し照れくさい気持ちまで、
静かに残している。

昔の写真を見ると、
「なんでこんな服を着ていたんだろう」
と思うことがある。

けれど、同時に、
「でも、あの頃の自分には似合っていたのかもしれない」
とも思う。

流行はいつも変わっていく。

細身が流行ったり、
ゆったりした服が戻ってきたり、
派手な色が来たり、
落ち着いた色が好まれたりする。

けれど、男の服の中には、
時代が変わっても消えないものがある。

白いシャツの清潔感。

黒いジャケットの安心感。

古いデニムの味。

履き慣れた靴の形。

そういうものは、
流行というより、
その人の時間に近い。

新しい服を買ったときの高揚感もいい。

でも、昔から持っている服を久しぶりに手に取ったときの、
少し胸が静かになる感じも悪くない。

もう着ないかもしれない。

今の自分には少し若すぎるかもしれない。

それでも捨てられない服がある。

それは、服そのものが高いからではなく、
その服を着ていた時間が、
どこかに残っているからだと思う。

男の服は、
派手に語られることは少ない。

けれど、古い服には、
言葉にしにくい記憶が詰まっている。

若かった自分。

少し無理をしていた自分。

かっこよく見られたかった自分。

何者かになりたかった自分。

そんなものが、
襟や袖やポケットの中に、
まだ少しだけ残っている。

懐かしい男の服の話は、
ただのファッションの話ではない。

それは、昔の自分を少しだけ思い出す話でもある。

今の服を着て、今を生きながら、
たまには昔の服を思い出す。

そして、少しだけ笑う。

あの頃の自分も、
それなりに一生懸命だったのだと思う。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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